ちば環境情報センター > ニュースレター目次>ニュースレター第124号
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千葉県立中央博物館 倉西 良一
2007年9月1日の毎日新聞によると農林水産・文部科学・総務省は、8月31日付けですべての小学生が農林漁村で長期宿泊体験をすることを目指す「子ども農山漁村交流プロジェクト」を発表した。2008年度には、各都道府県10校ずつのモデル校と受け入れるモデル地域40カ所を設ける方針で、5年後には公立小学校23,000校すべてで実施し、年間120万人が参加できることを目標とするという。宿泊体験は一週間程度で、高学年の児童が民宿や農家に泊まり、田植えや稲刈りを体験する。体験に参加するかどうかは各学校の判断となるが、目標の120万人は全国の1学年の人数にあたるので、施設整備などが実現すれば、全児童が小学校在学中に一度は体験に参できるらしい。
これは里山の生物多様性を維持する上でも、この上なく素晴らしいプロジェクトだと思う。これまで採算がとれないとされてきた伝統的な農業が、この機会に見直される可能性が出てきたからだ。
「小学生の農漁業体験」政策は魅力的なプロジェクトであるが、問題も多く含んでいる。子どもの農業体験とあるが、農業だけではなく農業をとりまく自然環境を理解することが大きなテーマとして位置付けられるべきだ。農業と自然環境の関係が理解できなければ、この体験学習は中途半端なものになってしまうであろう。これを教える指導者の育成も急務である。教科書的なマニュアルが作りにくい、実際に現地で行われている農業や自然環境を教えることは決して簡単ではない。
また受け入れる側も、特に房総での農業体験の場合、圃場整備をした田んぼでの農業だけでなく伝統的な谷津田での体験をさせてあげてほしい。ここに千葉の里山での生物多様性の原点があるといっても過言ではない。生物だけではない、日本人の心のふる里と言ってもいいだろう。美しい谷津田での作業体験のためにも、もう一度下草狩りや竹林の整備など箱物ではないところに気を配り里山を復活させてもらいたい。できることは子どもと一緒にしたほうがよい。化石燃料にたよらない時代の先人達の知恵を理屈だけでなく体で学ぶことができれば得るものはきわめて大きい。
もっとも危惧するのは、子どもの生き物ばなれである。生き物ばなれは想像以上に深刻である。せっかくの山村体験もカエルやムシが怖いようでは、恐怖体験にしかなり得ない。低学年からきちんと生き物体験をして、身近な生き物に愛着を持つような精神と知識を身につけてほしい。これも指導者の深い理解が必要である。指導者の生き物ばなれも心配の種ではある。
いろいろ問題があるにせよ、次世代を担う若者が農水産業に親しむ機会をもってくれるということは、本当にありがたいことだ。農水産業と環境の理解、この試みが成功することを心から願っている。
写真解説 2006年10月 大多喜町立老川小学校 休耕田を使っての生き物体験。最初、田んぼの泥をいやがっていた子ども達も、しばらくすると裸足でも平気になった。泥の中に足を入れた時の不思議な感触を楽しんだ。子ども達の歓声が田んぼに戻ってくる時こそ、里山の生き物達が戻ってくる時ではないだろうか。(撮影・解説:倉西良一) |
千葉市緑区 木山 裕子
暑かった夏も終わり、夕暮れと共に始まる虫の音に秋の訪れを感じるようになりました。いつも息子の慧がお世話になりありがとうございます。昨年の夏にエコ体験スクールに参加させていただいて以来、10才の息子はすっかり谷津田の自然と皆様の心温まる活動に魅せられ、楽しく参加させていただき一年が経ちました。この間、本当にたくさんの生きた自然との出会い、そして様々な自然を愛する方々のお心に触れ、多くの事を学ばせていただき、親としてとても嬉しく思っております。
帰宅後、毎回新しい発見に目を輝かせて話をする子供の姿を通じて、皆様の活動がいかに熱意のある素晴らしいものであるかと感じております。慧は幼い頃から虫探しが大好きで近くの野原で捕まえては名前を付けて飼い、毎朝「行ってくるよ」と登校する前に声をかけるほどかわいがっていました。でも虫の命は短いもの、冬にかけて彼らが亡くなるたびに泣きながらお墓を立て手を合わせていました。落ち込む子供の姿を見ては季節の終わりを感じたものです。
そのころの我が家の花壇は、冬の訪れと共にいつも虫たちの墓地になっていました。そんな彼も谷津田と出会ってから生き物を採取することはなくなり、自分から会いに行き、出会った生き物は喜んで自然に返してあげる事が出来るようになりました。最近では子供を通じて親の方が学んでいることも増えました。
五年生になった今年はYPPのご協力で「学校たんぼ」も実現し、米作りも体験できましたので、この夏休みに「ぼくが出会った谷津田の自然」と題しまして慧の目から見た谷津田の四季をまとめてみました。たくさんの子供達に谷津田を知っていただくいい機会になればとこの体験記を夏休みの自由研究として提出しましたところ、小学校から千葉市小中学校総合展の理科部門に出展していただける事となりました。このような機会を得られましたのも皆さんの活動のお蔭と心より感謝いたしております。
環境問題が叫ばれる昨今、豊かな自然を守る為には机上の知識だけでなく子供たちに体験を通して学ぶ、生きた学習を施していくことが不可欠だと痛感しています。しかしながら親の力や学校だけでは限界があります。そこでこのような活動がとても意義あるものであると感じます。いつの日か皆さんの積み重ねた日々が豊かな自然となって戻ってくる事を切に願います。どうぞ今後共よろしく御指導いただきたくお願い申し上げます。
東京都文京区 荒尾 稔
2007年10月7日、文京区・小石川にあります小石川植物園に参りました。入口から坂を登りきった台地上に、とても広々とした正に植物園としての設備と広大な桜並木があります。その奥まった一帯が「野草園」となっています。
あちこちでたくさんのツマグロヒョウモンを観察できましたが、この一角になんと20匹以上が群がった、一本の園芸用の木がありました。
びっくりです。たまたま野草園に見学にきた方々も一様に驚いて、かつては都内で観察したこともない南洋系の、しかもここ5年ほど急激に増えた蝶だと話しますと、温暖化とからんで考え込んでいました。同時に20頭もの観察です。
また、まったく手でつまめるような状態で、ツマグロヒョウモンが群がっていました。ほとんど、しかも新鮮な雄がほとんど。ペアとなっている個体もあり、地上では斃死した雌の個体の周りを5頭ほどもたかってもいました。大きな「オオスズメバチ」が2匹。ぶんぶんしていましたので、その被害者かもしれません。
この木は、和名 フサフジウツギで、園芸家では通常ブットレア、蝶の木と呼ばれる園芸種だそうです。原産地中国で学名は「Buddleja davidil
Franch」生垣などに使われることが多く、沢山の蝶が集まってしまうので、好き嫌いされる園芸種だと、その場で見学にきた老婦人に教えていただきました。
その他 ヒメアカタテハ×1、モンシロチョウ×3 とても小さい個体できになります。アゲハチョウ×1、不明小型のガ×1(よく飛び回って蜜を吸う)。
小石川植物園も、すでに秋の風情です。園内最奥の沼周辺ではコサギ×1、カルガモ×2(PEA)、モズの高い鳴き声、キジバト×2(番い)、アキアカネ×30程度(多くはない)、ツクツクボウシ×1、ヤマトシジミ×異常なほどの数、アカタテハ、キタテハを観察できず、です。
千葉市稲毛区 石橋 紘吉
おーいコナギさんよ! 今年はちょっと目覚めが早いようだね 田植え前から顔を出しているなんて 7月に入ってコナギさんよ!増えに増えたね 昨年の種がたくさん落ちたからかな? それとも今まで眠っていた種が芽吹いたのかな とにかくすごい!水面が見えないからね 稲さんの栄養分まで取ってしまわないでくれよ 小さな生物たちも息がつまるよ 少し除草させてもらうからね 深く根を張っているんだね お前さんたちの仲間のホテイアオイさんに比べると小さいね 花の色は同じムラサキ色をしているけれど 花は何時頃つけるんだい 稲刈り頃かな?今年は早いかな? 花が咲いている時間は半日くらいだよね まるでシンデレラみたいだ お前さんたちは少しだとかわいいんだけど そんなに大勢だと困るんだ お前さんの仲間を引っこ抜いたのが山となっているよ 堆肥場に運んで落葉と一緒にするよ 来年には田んぼへ返してやるよ こうすれば稲さんにとっても大助かり |
新米主婦のえこ日誌 C
山武郡大網白里町 中村 真紀 |
発送お手伝いのお願いニュースレター12月号(第125号)の発送を12月 7日(金)10時から事務所にておこないます。 |
編集後記: 関東地方からも紅葉の便りが届くようになりました。今年は色づきが遅れているとか。房総での見頃は12月になってからでしょうか。千葉の紅葉は雄大ではありませんが、常緑樹の緑の中に点在する紅や黄色の彩りは、絶妙の配色になっていると思います。今年はどんな色合いになるか今から楽しみです。 mud-skipper