ちば環境情報センター ニュースレター第106号

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2006. 5. 8発行    代表:小西 由希子

目 次

  1. 支川都川流域にメダカを呼び戻す会
  2. ハンターとの遭遇
  3. 千葉県鳥獣保護課様へ禁猟区の設定についてお願い 
  4. <事務局より>2005年にマスメディアに登場した記録

支川都川流域にメダカを呼び戻す会

千葉市中央区 五十嵐 秀雄

 地元、仁戸名小学校PTA会長の私に、昨年5月のとある日に小学校の教頭先生から携帯電話が入った。「会長さん、地域内で都川に詳しい方はいませんか?実は、NHKから電話がありまして、支川都川を取材したいとか・・・」。「とりあえず、私がNHKに電話してみます」ということで電話をしてみた。相手は『難問解決!ご近所の底力』という番組のディレクターのOさん。

支川都川(千葉市中央区仁戸名町)

「都川でメダカの保護活動などをされている方はいらっしゃらないでしょうか?絶滅危惧種(レッドデータブック)に掲載されてしまったメダカを川に呼び戻そうという活動ができる地域を探しているのです。都心部でしかもいまなおメダカが棲めそうな川、支川都川を、知り合いの専門家の先生に紹介してもらったのです。今現在活動していなくても、これからやってみようという地域を探しているのです」・・・「それなら、私が動いてみましょう!」。
翌週の5月14日、Oディレクターを支川都川に案内し、川沿いの遊歩道を2人で歩いた。葦が生い繁り、鯉が泳ぐ。護岸工事もほとんどされていない、手付かずの小川。Oディレクターは「千葉駅から15分もしないこんな都市部に、まだこんな所があるなんて・・・と感激の様子であった。こうして2005年7月7日に渋谷のNHK放送局へ行って収録するということが決まった。
6月11日に公民館でメダカについて初会合を開催。集まってくれた方々は約20名。NHKのカメラも入り、それぞれに都川やメダカへの思いを語ってもらった。(結果的にはこの日の映像は採用されなかった。)
そして約3週間の間に地域から22人の出演者の依頼を行い、7月7日の収録日を迎えた。バスで渋谷のNHKに到着すると早速、それぞれのイメージでメダカの絵を描け、というが、これがなかなか正しくは描けないものであった。収録中に我々に問いかけられたこと,何故メダカがいなくなったか?,メダカがいないと何故困る?・・・ここでオブザーバーの方の重要なキーワード。「メダカのいる環境を守りたい、ということなのです」その通りだ。今さら、なのだが、やっと本質に気付いた。


NHK放送センターでのスタジオ収録(2005年7月7日)
支川都川でのメダカ探しロケ(2005年7月10日)

 スタジオ収録後最初の日曜日(7月10日)。NHKのカメラも同行し、収録に参加した有志で支川都川にメダカ探しに出かけたが、一日かけても見つからなかった。ここまでの収録で番組制作され9月22日に放送された。
放送から数日後、私と同じ町内のTさんが番組を(それも偶然)見たと言って声を掛けてくれた。なんと!!17年くらい前に支川都川でメダカを捕まえそれを大事に増やしているという。歓喜,感動であった。10月2日(日)NHK放送後初のメダカ会議を開催。Tさんにメダカを持参してもらい、会議は俄然活気付いた!!
 1.今後小学校、幼稚園を中心に協力を依頼しメダカを増やす。
 2.増やした都メダカを放流するビオトープを地域内に作る。
 3.今後、春までの間は卵を産まないため、3月ころまでを準備期間とし、4月から本格的な活動を開始する。
 4.併行して、ビオトープ作りの土地の選定と使用交渉を行う。
以上を取り決めした。

2006年3月初旬、地域内の2小学校にメダカの教材としての使用を依頼。またメダカを増やすことへの協力を依頼し賛同を得る。
3月10日、NHKのカメラも入り、第2回のメダカ会議を開催。Tさんの飼っているメダカを増やすにあたり、新潟大学でDNA鑑定してもらうことを発表する。
3月11日、NHKが同行し、新幹線で新潟大学へメダカを持ち込む。理学部自然環境学科の酒泉教授にDNA鑑定を依頼。
3月19日、NHK同行で鑑定結果を聞きに再び新潟大学へ。持ち帰った結果は、次のメダカ会議を開催してその場で発表することに。(この紙面だけで内緒で発表するが、鑑定結果はB−11型という、関東に存在する一般的なメダカだそうで、これをこの地で殖やすことは問題ないという)。
4月に入り、メダカたちの動きも活発になってきた。産卵の時期が近づいているようだ。いよいよメダカ会議を開催し、5月の連休明けには学校に贈呈しようと考えている。マニュアル作りも始めた。
4月28日。朝から暖かな、初夏を思わせる陽気である。新潟から持ち帰ったDNA鑑定を受けたメダカを引き取り、育ててくれているKさんから電話。「メダカのお腹にタマゴが!」弾んだ声であった。はやる気持ちを抑えられず、Kさんの家に押しかけて見せてもらった。ある!ある!お腹にタマゴ!
たかがメダカの産卵なのだが・・感動!!・・ひとしきり観察し、早速、我が家の2階のベランダのTさんから分けてもらったメダカたちもチェックしてみた。すると・・あった!いた!タマゴを抱えたのが、いた!・・・まるで子どものような自分がそこにいた。
さて、改めて「メダカ」を考えてみた。何のためにメダカを呼び戻すのか・・・キーワードは「メダカのいる環境を守る」である。なぜいなくなったか、なぜ必要なのか、どうやっていくのか、だれがやっていくのか、どこまでやるのか・・。田んぼの減少や農薬、水質汚染、宅地開発、環境破壊。そして生き物に心を寄せなくなった人間。
我が家の2階のベランダに、分けてもらったメダカたちが元気に泳いでいる。昔はさほど気にもとめなかったメダカであるが、じっと見つめているとなぜか「癒される」ことに気づいた。取り戻すべきは「時間と気持ちのゆとり」なのかもしれない。
※その後の活動の様子がNHKの「難問解決!ご近所の底力」で5月下旬に放送される予定です。

ハンターとの遭遇

山武郡大網白里町 平沼 勝男 

 2月初旬の早朝、野鳥観察に訪れた下大和田(千葉県緑区)は凍てつくような寒さの中でした。一人で歩いていた私はいつのまにか4匹の犬に取り囲まれていました。明らかに猟犬とわかる犬でした。しかも2匹は敵愾心をあらわにし、こちらを睨んでいます。飛び掛ってきたらどうしようと思った瞬間、飼い主の号令で犬たちはすばやく去ってゆきました。正直ほっとしました。遠くに飼い主の姿が見えました。よく目立つオレンジの上着に、赤い帽子をかぶり、手には大きな猟銃を持っていました。

毎月第1日曜日に行われている観察会,こどもの参加もあり、
危険を感じることもある(2006年2月5日)
かすみ網禁止の立て札を設置した(2006年4月2日)

今まで、この下大和田の谷津田で自然観察会などをしているときに、犬を連れたハンターが現われ、すばやくしかも傍若無人に走り回る犬に苦々しい思いを何度もさせられてきました。不思議と銃声は聞いたことがありませんでした。しかし、出来ればここには来て欲しくない、何度もそう思ってきました。しかしこの時、なぜかこの人と話がしてみたくなり、近づいていきました。
この方は東京の江東区から来ていた人でした、年齢は50代後半くらいでしょうか、運送会社の部長さんをしている方でした。もともとお話し好きの方のようで、初めて会った私に猟のことについていろいろ教えてくれました。もちろん知らないことばかりの話でした、それでも面白かったです。いままで誤解していた部分もありました。納得できる部分、出来ない部分、やはり相容れられない部分。でも真剣に話すその人は一生懸命に狩猟者の声を聴いてくれと主張しているように思えました。
ここに来た第一の目的は犬の訓練のためだそうです。3月に犬の大会がある。そのための訓練をここでおこなっている。この方は狩猟の雑誌にもよく名前が載る、その世界ではそこそこ名の通った方らしいです(本人曰くですが)。そもそも狩猟というものは様々なルールとそれ以外にもマナーがあり、まさに紳士のスポーツである。特に欧米ではステイタスの高いスポーツである。そのことを強く言っていました。彼の連れた犬たちは実に主人のいう事を聞きます。口笛や掛け声ひとつで矢のように走り去ったり、集まって来たり、その場で座り込んで次の号令を待っていたりします。飼い主にじゃれ付くようなしぐさはしません。そのような動作は大会では減点になるのだそうです。こんなに飼い主の言う事をきく犬は始めて見ました。でも少しロボットのように見えてしまう気もしました。
また彼の手にしていた猟銃は真ん中の部分でぽっきり折れ、くの字型に曲がっています。これは、目の前に急にキジが飛び立っても、とっさに銃を撃つようなことがないような配慮のためらしいです。そういうときによく事故がおきるのだそうです。持っている銃は散弾が入っています。散弾の飛ぶ距離はおよそ250メートル。鳥を撃って仕留められるのはせいぜい50メートル以内だそうです。たとえ70メートル先にいた鳥を撃っても身の中に散弾が入り込まず仕留められないそうです。当然人も同じですが、人に散弾があたると銃で撃たれたという事になり大変なことになります。

谷津田に現れたキジのつがい(2005年5月8日) 新緑の下大和田(2006年4月22日)

犬を連れていないハンターは駄目だといっていました。そういう人は飛び立つ鳥にやたらと撃ってしまう人だと。事故を起こすのは犬を連れていない人だと。ハンターの中にはごく一部にルールやマナーを守れない者がいる。だから世間から白い目で見られてしまうのだと言っていました。そもそもなぜ犬をつれているか。この犬の種類はセッター犬というもので狩猟犬の代表的なものらしいです。首輪のところに電気的なホイッスルをつけていて、数秒ごとにピッピッと鳴り、ハンターに居場所を教えます。そして立ち止まって5秒たつと大きな電気的な音が鳴り響きます。これはキジや鴨などの狩猟鳥を見つけ、それを取り囲みます。つまりその大きな音は鳥を取り囲んだという合図になるのです。不思議なことにこの大きな音では鳥は飛び立たないらしいです。そして主人が射程内に入ってきたら犬が鳥を飛び立たせる。そして主人が撃つ。
猟をするには、その都道府県に申請して認められた場所で猟をします。県にお金も払っています。この人の帽子には千葉県と神奈川県と茨城県のバッチが付いていました。許可章です。3つの県で8万くらい払うそうです。しかも狩猟鳥のキジを養殖業者から1羽4千円で買い、放っているというのです。仲間とこの冬に60万円程それに使ったというのです。場所代も払っている、鳥も放っている、ルール・マナーは守るだから我々には猟をする権利がある。
皆様はどう思いますでしょうか。確かに自由や権利はある程度は必要でしょう。それに狩猟は絶対に面白いと思います。この人の持っていた猟銃を見たら(近くで始めて見ましたが)何故かぞくぞくしている自分に気が付きました。しかし私には娯楽としての狩猟は人間のエゴイズムそのもののように思えてなりませんでした。一方的な自然環境の破壊や生態系を無視した開発がどれだけこれからの人類の生活を脅かしてゆくのかはかりしれない現代。娯楽としての狩猟はすでに前時代的なものであり、環境のとらえ方、自然との接し方を大きく見直す時代にもうすでになっていると思うのです。もう少し違う目でこの谷津田を見て欲しいと思いました。しかしそのことを私は言えませんでした。  (写真撮影:田中正彦)

千葉県鳥獣保護課様へ禁猟区の設定についてお願い 

市原市 南川 忠男 

 千葉市緑区下大和田地区の狩猟区域の区分について調べたところ、土気の大部分は休猟区になっていましたが、下大和田の谷津の辺りは狩猟できる区域となっております。平成17年度の狩猟期間は終わりましたが、平成18年度の改定(見直し)では、土気のこの区域は狩猟できる区域になる予定とのことでした。背の高い葦のため見通しが悪く、銃による事故が発生することも考えられます。
私はこの地区の農家より土地を借りて、主に千葉市民の方々と協力して稲作を実施しておりますが、人口密度が低いとはいえ開発が進み、居住者が多くなりました。多くの農作業をしている方々や観察会の参加者の安全を確保することが重要ではないかと考えております。
また、最近キジの姿も見なくなり、狩猟期間中に姿を消したのかもしれません。
夜はフクロウの声も聞こえる(フクロウが安心して生息している)環境ですので、生物の多様性を発展させる意味でも千葉県の鳥獣保護課様には平成18年度の改定時、このことをご考慮の上、全域禁猟区としていただきますようお願いします。


<事務局より>2005年にマスメディアに登場した記録       

 2005年から2006年初旬にかけてマスメディアに登場した、NPO法人ちば環境情報センター(CEIC)は、テレビ2回,新聞など12回に上ります。これは設立されて9年、NPO法人になってまだ3年ですが、地道な活動の積み重ねが評価された結果だと思います。特に今年1月29日に実施されたNPO活動発表会中央発表会で事務局を努められたことは、今後の活動の大きな自信となりました。

年月日 メディア名 登場内容
1 2005年1月 NPOちばネット CEICの紹介
2 5月 エコライフ千葉 CEICの紹介
3 6月29日 NHK総合テレビ 谷津田の活動の放映
4 7月   ちば県民だより CEICの紹介
5 9月19日 千葉日報 谷津田での稲刈り
6 9月24日 地域新聞 都川で川遊び
7 9月28日 NHK総合テレビ 谷津田での稲刈りの放映
8 11月21日 あさひふれんど千葉 小山町で「メダカの学校」池づくり
9 2006年 1月14日 毎日新聞 八千代でのNPO活動発表会の案内
10 1月28日 千葉日報 八千代でのNPO活動発表会の案内
11 1月 リサイクルハンドブック CEICの紹介
12 2月 1日 あさひふれんど千葉 CEICの定例谷津田観察会
13 2月22日 エコライフ千葉 PETボトル工作教室
14 2月 千葉市少年自然の家会報 会報誌[ゆくっと]にCEIC紹介

 それぞれのイベント特に谷津田でのイベントに参加される人数も着実に増えており、今まで、CEICのイベントに参加してくださった方々に感謝申し上げます。今後も、会員はもとより広く市民・県民の方々に満足していただけ楽しながら、いつの間にか環境のことも考えているという活動を展開し、県内の環境に関する情報を発信して参りたいと考えております。  (文責:南川)


発送お手伝いのお願い ニュースレター6月号(第107号)の発送を 6月 7日(水)10時から事務所にておこないます。発送のお手伝いをしてくださる方を募集しています。よろしくお願い致します。


編集後記:連休を利用して、日光戦場ヶ原に出かけてきました。ヒガラやノビタキ,ホオアカなどに混じって、アオジが囀っていました。つい先日まで下大和田で、チッチッとひかえめに鳴いていたのが、あふれんばかりの命の躍動を感じさせてくれました。新緑と合わせて日本の自然の美しさに心が洗われた一日でした。mud-skipper